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法律・労務 Q&A
このコーナーでは、会員の皆さまの日常生活など身近なところで起こりそうな法律問題や、職場で知っておくと便利な労務問題(社会保険・労働保険など)を取り上げてQ&A方式でわかりやすく紹介します。このコーナーは、月1回の間隔で更新する予定です。法律問題や労務問題について知りたいこと、疑問に思ったことなど、取り上げてほしいテーマがございましたら、このページ末尾のメール送信ボタンからご投稿ください。リクエストの多いテーマを選んでQ&A形式で掲載していきます。なお、頂いたメールに個別に回答する仕組みではございませんので、あらかじめご了承下さい。
法律Q&A
Q アパートを借りて一人暮らしをしています。先日、大家さんから、家賃を値上げすると言われました。私としては、アパートの場所や間取りなどの環境、近隣の家賃の相場から考えると、これまでの家賃で妥当だと思っています。それでも、借りている立場としては、家主の要求に応じるしかないのでしょうか。
A 賃貸借契約においては、契約の途中での家賃の変更は可能で、契約書に家賃の変更について定めがなくても増額することができます(借地借家法32条)。

不動産に課される税金などの負担が増加したとか、地価が上昇した、周辺の家賃の相場が上昇したなどの事情の変化が生じた場合、それまでの家賃が適切でなくなることがあるからです。

家主から賃料値上げの申出があった場合、借主としてはまず、値上げの理由を明らかにしてもらい、値上げの理由や値上げ額が相当なものかどうかを判断することが大切でしょう。

値上げが不当と判断され家主の要求に納得がいかない場合であっても、賃料の支払を拒み続けると、債務不履行であるとして契約を解除される可能性があります。

借主としては、相当と判断する賃料を支払うことになるでしょうが、家主の側で、値上げ後の賃料でなければ受け取らないことも考えられます。

その場合には、供託といって、賃料を法務局の供託所に預け、保管を頼む手続があります。この方法を取れば賃料支払債務の不履行とはなりません。(ただし、供託を行う前に、契約の定めに従って、家主に家賃を現実に提供する必要があります。)

家賃の変更について家主と借主との間で話合いがまとまらない場合、家主としては、簡易裁判所に調停を申し立てることになると思われます。

さらに、調停で解決しなかった場合には、家主から訴訟を提起されることも考えられます。

なお、借主は、裁判が確定するまでの間、相当と認める額の家賃を支払うことをもって足ります。(上述の供託も弁済に含まれます)。

ただし、裁判で確定した賃料に、既に支払った額が不足する場合には、その不足額に年一割の遅延損害金を支払わなくてはなりません(借地借家法32条2項但書)。

<弁護士 山田恵>

Q 借りているアパートの家賃の支払が厳しく、2ヶ月分滞納してしまったところ、家主から、賃貸借契約を解除すると言われました。 入居した時の契約書には、「契約に定める義務の履行を怠った場合には、相当の期間を定めて催告を行い、この催告を受けた者が期間内にその義務を履行しないときは、本契約を直ちに解除できる」と書かれています。出て行く先も決まっていないのですが、すぐに出て行かなくてはならないのでしょうか。
A アパートを借りる契約は、当事者の一方(貸主)が他方(借主)に対してある物を使用・収益させることを約し、相手方がこれに対して賃料を支払うことを約する契約、すなわち賃貸借契約(民法601条)です。

賃貸借契約においては、貸主は目的物を使用収益させる義務を負い、借主は賃料支払義務を負っていますので、借主の家賃不払いは契約違反となります。

ただし、契約書上、家賃の不払いが契約解除事由とされていても、通常、不払いが契約違反となるのは、家主との信頼関係を破壊するに至る場合のみとされています。

滞納してしまった事情にもよりますが、2ヶ月の不払いでは、信頼関係が破壊される場合とまでは言えないと考えられます。通常、3ヶ月の賃料不払いが存在する場合には、信頼関係を破壊するものと言えるでしょう。

この場合、家主から採られる手段として、まず、相当な期間(通常1週間程度)内に未払い賃料を支払うよう催告され、さらに、その期間内に支払いがなければ債務不履行として契約を解除する、との通知(通常、内容証明郵便)があることが考えられます。

契約が解除されると賃貸借契約は終了するので、借主はアパートを明け渡さなければなりません。なお、明渡しの際には部屋を原状に回復する義務があります。

借主が任意に明け渡さない場合、賃貸人は法的強制力により権利の実現を図ることが考えられます。具体的には、裁判所に明渡し訴訟を提起し、勝訴判決に基づいて明け渡しの執行を請求し、執行官などの執行機関によって強制的に明渡しが行われることになります。

<弁護士 山田恵>

Q 中学生の娘が学校で同級生からいじめにあっているようです。腕にあざを作って帰宅したことから娘に原因を聞き、発覚しました。クラスの担任の先生に娘がいじめにあっていることを連絡しましたが、そのような事実はないと言われました。しかし、その後もいじめはなくならないようです。いじめに対処する良い方法はないでしょうか。また、学校や相手方の親に対して法的に何らかの請求をしていくことはできるのでしょうか。
A 学校でのいじめは、休憩時間や放課後など、教師の目が届きにくい時間・場所において行われることが多いため、周囲に発覚しにくく、また、いじめを受けた子どもも、親や教師に相談できずに一人で悩んでしまうことも多いため、周りの大人も気付きにくいことが多いようです。

親としては、普段から、子どもとのコミュニケーションを大事にして、子どもが必要以上に小遣いをねだる、あざができているなど、恐喝や暴力などの被害にあっているサインを見過ごさないよう気をつけることが必要です。

そして、もしいじめの事実が発覚した場合には、教師や学校長など学校側に相談することが考えられますが、被害にあっている子ども自身が引き続いての登校を望んでいる場合、告げ口をしたとしてさらに被害が悪化しないとも限りません。子どもの意思を何よりもまず第一に尊重した慎重な対処が望まれます。なお、地域の弁護士会でも相談窓口を設けています。

クラス担任など学校の教師の協力を求め、加害生徒への個別指導をしてもらう、被害生徒がいじめにあう状況にならないよう監督してもらう、保健室登校やクラス替えをしてもらうなどの方法もあります。

ただし、相談しても、その教師の力不足などにより事態が改善しないこともありえます。クラス担任だけでなく、学年主任や教頭・学校長、場合によっては教育委員会などの公的機関に対処を求めることも考えられます。

加害者の親あるいは教師・学校は、子どもあるいは生徒に対する監督義務を負っています。したがって、いじめにより精神的あるいは身体的損害を被った被害者は、加害者の親あるいは教師・学校に対し監督義務違反として、損害賠償を請求したり、謝罪を求めたりすることができます。ただし、訴訟提起となると相手の親や学校と対立する姿勢が明確になり、以後の子どもの登校継続がしにくくなる危険もありますので注意が必要です。

<弁護士 山田恵>

Q 友人が、1年前に怪我をして入院しました。仕事はアルバイトだったのでその日から収入が途絶え、やむなくサラ金からお金を借りたのですが、退院後も怪我の治療のため通院しなければならず仕事ができる日数が少なくなり収入も減少したため返せなくなりました。しばらくは、他のサラ金から借りてそれを返済に充てていたのですが、とうとうそれも行き詰ってしまい困っています。近頃は、ヤミ金からも借り入れているようで、取立てが厳しく毎日怯えています。債務は総額で200万円と聞いています。どのようにアドバイスしたらいいのでしょうか。
A 友人は、大変な状況になりました。
債権者には、サラ金のほか、銀行やクレジットカード会社があります。また、違法な業者としていわゆるヤミ金融があります。業として、人に金銭を貸すためには財務局、都道府県への登録が必要とされています。気を付けなければならないのは、登録業者だからといって違法業者ではないとはいえないことです。例えば、東京都に登録している業者の中にも多くのヤミ金融業者がいます。「ヤミ」というのは、隠れて金を貸しているということではなく、違法な金利を徴収し、返済が滞れば脅迫的な取立てをしたり、自宅や勤務先に取り立てに行くといった違法行為を繰り返す業者の意味です。昨年の、法律改正でこのようなヤミ金融業者はかなり減少しましたが、残っている業者はむしろ更に悪質化しているようです。ご質問の友人は、このようなヤミ金からも借り入れているようです。借金をする人の傾向を見ていると、最初は通常のカード会社やサラ金から借り入れをしますが、返済が滞ると信用情報リストに記録されるためカード会社やサラ金からは借り入れができなくなります。このような人は、仕方なくヤミ金融業者から借り入れてしまうのです。
友人は、ヤミ金融業者から借り入れをし、厳しい取立てを受けているということです。このような状況になってくると自分で解決することはまず無理です。各都道府県には、弁護士会がありそこで法律相談を行っています。特に、東京では多重債務者のための専門の相談センターが設けられ対応しています。まず、専門家に相談しましょう。弁護士は、債務者から委任を受けると債権者に受任の通知を送付します。これで、通常のサラ金業者などからの直接の取立てはなくなります。但し、悪質なヤミ金融業者の中には、なお取立てを続ける者もあります。その場合は、依頼した弁護士に対応してもらってください。
多重債務に陥った人の債務を処理することを「債務整理」といいます。債務整理には、任意整理、自己破産、民事再生などいくつかの方法があります。ある程度返済資力のある場合は、債権者と交渉して長期分割で返済をする任意整理という方法を選択します。この場合は、高金利を利息制限法の利率に引きなおして交渉しますから長期間借り入れをしているような場合は過払い状態となっていることもあります。なお、収入が安定しているような場合は民事再生手続を選択することがあります。これは、裁判所の力を借りて一定の割合の債務を長期分割で返済する方法です。しかし、収入が無く、あるいは安定していない、返済原資が出ないといった場合は、自己破産を選択することになります。これは、裁判所に自ら破産を申し立てて最終的に免責の決定をもらい返済を免れる方法です。これは、債権者を犠牲にして債務者の再スタートを図る制度です。そのため、借り入れたお金をギャンブルやブランド品の購入資金にのみ当てたり、債権者をだまして借り入れをしたりしたような場合は免責がもらえません。また、不動産などの資産がある場合は、管財人が選任され資産を処理して債権者に配当することになります。
ご質問の友人の場合は、収入はアルバイトからということです。おそらく自分の生活費で使い果たすでしょう。初めての借り入れが、入院のころですから約1年前です。そうすると、過払い金が発生することは考えられません。そうすると、自己破産を選択するのが相当ということになるでしょう。ヤミ金融業者に対しては、依頼した弁護士に対応してもC?らいましょう。なお、自己破産の手続は自分でもできますが、東京地方裁判所の場合即日面接方式を採用しており、手続が速やかに進められ早期処理が可能です。ただし、これは弁護士が代理人として行なうことになっています。また、費用が無い場合は、法律扶助協会(平成18年10月からは、日本司法支援センターに引き継がれます)による立替制度もありますので、これを利用しましょう 。
(つづく)

<弁護士 吉岡譲治>

Q 私の夫は、私とささいなことで口論になったとき、私に対し殴る蹴るなどの暴力を振るうことがあります。私はそのような場面をまだ幼い子どもに見せたくありませんし、私自身、身の危険を感じるようになりました。新聞で以前、夫からの暴力を防止するための法律ができたと目にしたことがあるのですが、それはどのような法律なのでしょうか。夫の暴力から逃れることができるのでしょうか。
A 従前、家庭内のもめごとに対しては、警察など国家権力がみだりに介入すべきではないという民事不介入の原則という考え方があり、夫からの暴力は犯罪となる重大な人権侵害であるにも関わらず、法的な救済が必ずしも十分に行われてきませんでした。
しかし、1980年代から、女性や子どもなど弱者に対する暴力が国際的な問題として取り上げられるようになり、わが国でも核家族の増加、都市化により家庭内のトラブルに対し地域での監視が及びにくくなったことや、不況や失業の増加など社会的なストレスが妻や子どもなど肉体的弱者に対する暴力の増加となって現れてきたことなどから、これに対する新たな法制度の整備による救済の必要性が検討されるようになりました。
そして、2001年4月、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(いわゆるDV防止法)が制定されました。
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、一般には夫など身近なパートナーから受けるあらゆる形態の暴力を指します。
DV防止法の対象となるDVの加害者は、配偶者及び婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含みますので、内縁関係にある者を含みますが、単なる恋人であるというだけでは対象となりません。
本法の大きな柱として、「保護命令」の制度があります。これは、配偶者から身体に対する暴力を受けたことがある被害者が、さらに配偶者(元配偶者を含む)からの生命または身体に対する暴力により生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合に、裁判所が被害者の申立てによって被害者の生命または身体の安全を確保する制度です(DV防止法第10条)。
保護命令には「接近禁止命令」と「退去命令」があります。「接近禁止命令」とは、加害者である配偶者に対し、命令の効力の生じた日から起算して6ヶ月間、被害者の身辺につきまとい、又は被害者が通常所在する場所の付近をはいかいすることを禁止するものです。「退去命令」とは、命令の効力が生じた日から起算して2ヶ月間、同居生活を送っていた住居付近をはいかいすることを禁止するものです。
但し、保護命令は、身体に対する暴力により生命又は身体に重大な危険のあるおそれが大きい場合に限定されており、精神的暴力の場合は除外されています。
また、本法では、配偶者暴力相談支援センターについても規定が置かれています。同センターは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るための業務を行う施設で、各都道府県が設置する婦人相談所その他の適切な施設です。
ここでは、被害者の相談にのったり被害者が安全に生活できるように一時保護を行ったりする他、就業の促進や各種情報の提供、関係諸機関との連絡調整などの業務を行います。
さらに本法では、配偶者からの暴力を受けている者を発見した者に対し、上記センター又は警察官への通報義務が課されています。
ご相談の場合、あなたは夫から身体に対する暴力を受け、身の危険を感じているとのことですので、できるだけ早く警察や配偶者暴力相談支援センターに相談することをお勧めします。場合によっては保護命令の申立をするべきでしょう。

<弁護士 山田恵>

Q 私の娘は19歳の大学生で、親元を離れて一人暮らしをしていますが、先日、学費として仕送りしたお金で、親である私に無断で高額なブランド品を買ってしまったとのことです。未成年者が親の同意を得ないでした契約は取り消せるという話を聞いたことがありますが、返品してお金を返してもらうことはできるのでしょうか。未成年者の取り消しの制度について教えてください。
A 未成年者(20歳未満の者、民法第3条)が、契約(売買契約、金銭消費貸借契約、賃貸借など)のように法律的な効果を生ずる取引行為を行うには、原則として法定代理人(通常は親権者である両親)の同意を得なくてはなりません。
同意を得ずに締結した契約は、法定代理人または未成年者本人が、単独で取り消すことができます(民法第4条2項)。
未成年者は年齢的に未成熟で判断能力が乏しいため、そのような未成年者を保護するために置かれた規定です。
取り消しの意思表示により契約は遡ってなかったものとなり、双方受領した金品は不当利得となるので、購入した商品を返品して支払ったお金を返してもらうことができます(なお、返品する商品については、現に利益を受ける限度で返せば足ります)。
但し、以下の場合には取り消しはできません。

(1)贈与の承諾のように単に利益を得る行為、または債務を免れる場合のように単に義務を免れる行為は取り消すことができません(民法第4条1項但書)。
(2) 法定代理人が「小遣い」のように、使用目的を定めないで処分を許した財産を未成年者が自由に使った場合や、「学費」や「旅費」など、使用目的を定めて処分を許した財産を未成年者がその目的の範囲内で使った場合は、取り消すことができません(民法第5条)。
(3) 未成年者が詐術を用いて、自己を成年であるとか、法定代理人の同意を得ているかのように相手方に信じさせて契約した場合には、取り消すことはできません(民法第20条)。
(4) 営業を営むことを許された未成年者は、営業に関しては成年者と同一の能力を有するとみなされるため、当該営業に関して生ずる法律行為については取り消すことができません(民法第6条)。
(5) 未成年者が婚姻すると成年に達したものとみなされるので(民法753条)、取り消しはできなくなります。
未成年者が親から学費や家賃という一定の目的を指定されて仕送りを受けたお金で無断でブランド品を購入した場合、売買契約締結は目的の範囲外と考えられるので、取り消すことができると考えられます。但し、特に使途を定めないで小遣いとして仕送りをし、未成年者がそれを自由に使ったのであれば、取り消すことはできません。

<弁護士 山田恵>

Q 高齢者虐待防止法について教えてください。
A 1.本年4月1日に、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(以下「高齢者虐待防止法」といいます。)が、施行されました。同法は、「高齢者の虐待が深刻な状況に」あることから、高齢者虐待の防止等に関する国の責務、高齢者保護のための措置、養護者の負担の軽減など養護者に対する支援のための措置などを定め、高齢者の虐待防止等を図ることを目的としています(同法第1条参照)。

2. 同法の制定(平成17年11月1日)に先立ち、厚生労働省からの助成を受けた財団法人医療経済研究機構が「家庭内における高齢者虐待に関する調査」を行い、平成16年4月20日にその概要を発表しています。
調査の結果によりますと、虐待を受けている高齢者の平均年齢は81.6歳で、75歳以上85歳未満が最も多く43.3%ということです。虐待を行った者については、息子が32.1%と最も多く、次いで配偶者20.3%となっています。そして、虐待者の介護への取り組みは、60.6%が主な介護者として介護を行っており、そのうち介護に協力してくれる者がいたのは39.0%にとどまっています。
虐待の内容については、(1)身体的虐待、(2)心理的虐待、(3)性的虐待、(4)経済的虐待、(5)介護・世話の放棄・放任による虐待の五つに区分していますが、(2)心理的虐待が最も多く63.6%です。次いで(5)介護・世話の放棄・放任が52.4%、身体的虐待が50.0%と続きます。なお、生命に係わる危険な状態が、全体の10.9%あったとの結果も出ており高齢者虐待問題の深刻さが明らかになっています。このような状況を踏まえて制定されたのが、前記「高齢者虐待防止法」です。

3. 同法第2条は、65歳以上の者を「高齢者」とし、高齢者虐待の主体を(1)養護者と、(2)養介護施設従事者等としています。虐待の内容については、原則として、(1)身体に外傷が生じ、又は生じる恐れのある暴行を加えること、(2)高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、(3)高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと、(4)高齢者にわいせつな行為をすること、又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること、(5)高齢者の財産を不当に処分することその他高齢者から不当に財産上の利益を得ることとされ、前記5区分とほぼ同様ですが、(2)については、養護者に同居者の虐待行為防止義務を、養介護施設従事者等については職務上の義務懈怠違反を定め、また、(5)については高齢者の親族も虐待の主体とされています。これは、高齢者の財産を食い物にするのは養護者に限定されないからです。
(つづく)

<弁護士 岡治>

Q 私は夫と話し合いにより離婚しました。その際、3歳の子の親権者を父として届出をしました。しかし、子どもはまだ幼いため、母親である私が子の面倒をみたいと思っています。親権者を父とした以上、私が子の面倒を見ることはできないのでしょうか。
A 未成年の子がいる場合で、父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならないとされています(民法819条1項)。ここで親権とは、未成年の子を監護教育し、財産を管理する親の権利義務をいいます。協議離婚の届出をする際、親権者を父親と定めて届け出た場合、戸籍には親権者として父親が記載されます。
離婚後、親権者となった相手方が病気になったとか暴力団が出入りしているなど、子どもの生育にとって良くない事情が判明した場合、家庭裁判所に親権者の変更を申立てることができます。
他方、子どもを実際に引き取って監護養育する者(監護者)を親権者とは別に定めることもできます。監護者をどちらにするかについては、離婚の際、届け出る必要はありませんし、戸籍にも記載されません。
監護権については、離婚が成立した後でも、当事者間の協議で親権者でない者を監護者とすることができますし、また、家庭裁判所に子の監護者の指定の審判を申立てて、家裁の判断にゆだねる方法もあります。
親権者・監護者を変更あるいは指定する家裁の審理においては、子の福祉を第一に優先して判断されることになります。子どもが0歳から3歳の乳幼児の場合、その監護養育は母親にゆだねるのが子の福祉に最も適うとの考え方から、母親が精神病であるとか生活環境が劣悪であるなど特別の事情のない限り、多くは母親が指定されることが多いようです。
また、子の年齢にもよりますが、専門的知識を有する家庭裁判所調査官が、子どもとの面談や心理テストを行い、その結果に基づき親権者の変更あるいは監護者の指定について裁判官に意見を述べることもあります。
なお、監護者とならなかった親は、子どもと定期的に合うことのできる面接交渉権について、その頻度等内容を決めるよう家裁に申立てることができます。

<弁護士 山田恵>

Q 交際していた男性と婚約し、式場予約などして準備を進めていましたが、式の3ヶ月前になって、その男性から、他に好きな人が出来たので婚約を取り消したい、と言われてしまいました。準備にはかなり費用もかけていますし、私の精神的なショックも大きいのですが、何とかならないのでしょうか。
A それでも結婚を望んでいるのであれば、「婚約履行請求」の調停を家庭裁判所に申し立てることができます。しかし、当事者間に合意が成立する見込みがない場合には調停不成立となり事件は終了します。
他方、相手方と別れる決心をした場合、正当な理由もなく婚約を破棄された事実があれば、経済的、精神的損害の賠償を相手方に請求する方法があります。
予約していた式場のキャンセル費用や新居の準備費用等、結婚のための仕度費用の他、婚約破棄により被った精神的苦痛に対する慰謝料を相手方に請求することができます。
単に他に好きな人ができたから、というだけでは正当な理由があるとはいえませんので、損害賠償の請求は可能でしょう。
また、結納金を渡していた場合には、婚約が破棄されると、受領した金銭は民法上の不当利得となると考えられますので、その返還も求めることができます(但し、公平の観点から、婚約が不成立となったことについて責任のある側が結納金を授与していた場合には、その返還を求めることはできません)。
慰謝料等の損害の賠償を請求する場合も、当事者の話合いで解決しない場合、家庭裁判所に慰謝料等の請求あるいは結納金の返還請求の調停を申立てることができます。
なお、いわゆる「結婚詐欺」として刑法上の詐欺罪に該当するといえるためには、結婚する意思がないのに、金品を騙し取る目的で、結婚するように信じさせ、金品を交付させようとしたことが必要で、金品を詐取する目的がなかった場合には、刑法上の詐欺罪に該当するとはいえません。

<弁護士 山田恵>

Q ギャンブルが未成年者に禁止されるのはどうしてですか。
A 1.ギャンブルには、賭博(とばく)と富くじがあります。「賭博」というのは、偶然の勝ち負けによって現金などの経済的利益を得たり失ったりすることを争うことを言います。「富くじ」も、賭博の一種といわれています。これは、異なる数字を記載した札をあらかじめ発売し、その後で抽選など偶然性を有する手段を用いて富くじを買った者の間に不平等な利益の分配をすることといわれています。
「賭博」も「富くじ」も刑法によって処罰の対象になっており、違法な行為とされています(刑法185条、187条)処罰の根拠については、《1》他人の財産に対して危険をあたえるからという考えと、《2》労働による財産の取得という国民の健全な経済的生活の風習を堕落させるからという考えがあるといわれ、日本の刑法は、《2》の考えによっているとされています。(『刑法講義各論』大谷實著・成文堂498頁以下)
以上のとおり、ギャンブルは未成年者に禁止されているのではなく国民全てに禁止されているのです。ですから、賭けマージャンをすれば賭博罪で処罰されることになります。ところが、これには例外があります。

2. 地方公共団体が開催している公営ギャンブルです。公営ギャンブルには、公営競技(競馬、競輪、競艇、オートレース)と、公営くじ(宝くじ、スポーツ振興くじ)があります。これらについては、それぞれ法律に条件や内容が定められています。例えば、スポーツ振興くじについては、19歳未満の購入ならびに譲受が禁止されています。競馬法は、未成年者が勝馬投票券を購入し、又は譲り受けてはならないと定めています。自転車競技法は、学生生徒及び未成年者が車券を購入し、又は譲り受けてはならないと定めています。
ギャンブルは違法な行為であって刑法で処罰されるはずなのになぜでしょうか。前記のとおりこれらの公営ギャンブルは法律に定められています。その根拠は、主に地方財政のためとか経済政策のためとか言われています。これに対しては、財政確保などのためにギャンブルを認めてしまっては、先の処罰根拠は建前だけになってしまうのではないかという批判が向けられています。ちなみに、平成18年3月15日の朝日新聞には、経済産業省が売り上げが減少している競輪について自転車競技法を改正して20歳以上なら学生でも車券を買えるように改正するなどの関係法案を通常国会に提出したとの記事があります。

3. 公営ギャンブルならよくて、私的に賭けマージャンなどをやると処罰されるというのはどうも変ですね。また、19歳以上ならギャンブルができて、19歳未満はできないというのもわかったようで何やらよく理解できませんね。19歳未満は、未成熟で賭け事を覚えると勤労意欲を失い立派な大人になれないということかもしれませんが、では大人はどうなんでしょうか。もともとそういう趣旨で未成年、成人にかかわらずギャンブルを禁止し刑法で処罰の対象としていたのではないでしょうか。皆さんも考えてみてください。

<弁護士 吉岡譲治>

Q 借金を抱えていた夫が死亡し、妻である私が相続人となりました。相続により借金も受け継ぐことになると聞きましたが、私としては借金を払える余裕はありません。返済しなくて済む方法はないでしょうか。
A 家庭裁判所に相続の放棄を申し立てれば、借金を免れることができます(民法938条〜940条)。すなわち、相続人(相続により権利・義務を受け継ぐ者)は、相続(死亡した者が所有していた財産上の権利義務を承継すること)が開始した後に、家庭裁判所に対し相続放棄を申し立てることにより、被相続人(相続財産を残して死亡した者)からの相続の効果を拒否することができます。 相続人は、被相続人が死亡すると同時に被相続人の相続財産を承継しますが、相続人の意に反して過大な債務まで相続させることのないよう、認められた制度です。
相続放棄をするには、被相続人の死亡を知った日の翌日から3ヶ月以内に、被相続人の最終住所地の家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出します。 相続放棄により、初めから相続人にならなかったものとみなされ(民法939条)、放棄した者を除く他の相続人が相続することになります。
他方、相続財産に、借金の他、プラスの資産がある場合、限定承認(民法922条)の申述をすることにより、プラスの資産の限度で借金を返済し、なおプラスの資産が残っていれば承継するということもできます。
限定承認をするには、被相続人の死亡を知った日の翌日から3ヶ月以内に、被相続人の最終住所地の家庭裁判所に相続限定承認の申述書を提出します。ただし、限定承認の場合、相続人が複数いるときは、全員の合意が必要となります。

<弁護士 山田恵>

Q 借りていたアパートの賃貸借契約が終了し、建物を明渡しました。しかし、借りる際に差し入れていた敷金を返してもらっていません。借りている間は賃料不払いもなく、また、特に部屋を汚したり破損したりもしていないのですが、敷金を返してもらうことはできないのでしょうか。
A 「敷金」とは、借家契約に際して借主から貸主に対して交付される金員で、賃貸借契約終了時に、未払賃料や建物に関する損害賠償債務があれば当然に敷金から控除され、残額が借主に返還されます。
賃貸借契約終了時、借主は賃借物について借主の負担において原状回復義務を負いますので(民法616条、597条1項、598条)、その費用相当額については敷金から差し引かれることになります。ただし、ここでいう原状回復とは、完全に契約締結以前の状態に戻すことまでは必要でなく、通常の態様で使用したことから当然生じる損耗・汚れについての回復義務は含まれないとされています。
入居時に作成する「賃貸借契約書」の中で、畳の表替えやクロスの貼替え等についてまで借主が原状回復義務を負うとする特約条項が定められることがありますが、多くの裁判例は、そのような原状回復特約について、借主の故意・過失、及び通常でない使用による損耗等の損害に限定されると解釈しています(名古屋地判H2.10.19、東京地判H6.7.1等)。畳・ふすま・壁等の変色・色落ち等は、借主が通常の使い方をしていても時間の経過に伴って発生する自然の損耗であり、原状回復義務の対象とはならないと考えられます。これらの張替え等を行うことは入居者の入れ替わりによる貸主の物件の維持管理上の問題であって、貸主の負担とすることが妥当と考えられるからです。なお、賃貸借契約書において、畳の表替え、襖の貼替え等について借主負担とする特約を定めることがありますが、このように、一定範囲の小修繕を借主負担で行う特約については、賃貸借契約継続中の貸主の修繕義務を免除することを定めたにとどまるものと解釈するのが妥当であり(名古屋地裁2.10.19等)、通常の原状回復義務を超えた新たな義務を退去時の借主に負わせる特約と解することはできません。
また、清掃料については、借主退去後に専門業者が入って行う清掃は、貸主が次の入居者を確保するという目的を有していることから、その費用は貸主負担とすることが妥当であり、借主が通常の使用をしている場合に発生する汚損については原状回復の対象とならないと考えられます。
したがって、原状回復費用として貸主が負担する範囲は、借主の故意・過失、及び通常でない用法により発生した損耗の補修費用相当分に限られると考えられるので、未払賃料がなく、また、故意や不注意、通常でない用法により部屋を汚したり破損したりしていないということであれば、敷金は返還されると考えられます。

<弁護士 山田恵>

●看護師国家試験
Q 私は、今年看護学校に入学し看護師を目指しています。看護師になるためには国家試験を受けて免許を得なければなりません。普通の職業では、国家試験を受けなくても仕事はできるのにどうして看護師は国家試験を受けなければならないのでしょうか。
A 保健師助産師看護師法(以下「保助看法」といいます)第7条は、「看護師になろうとする者は、看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない」としています。
ある職業に就くために国家試験あるいはこれに準ずる試験に合格し免許を与えられなければならないものは医療職の他、弁護士や公認会計士あるいはボイラー技士、自動車整備士など多種多様です。
どうして、このような職業に就くのに免許が必要なのでしょうか。免許を与えるということは誰でもがその仕事ができるわけではないということですから、一定の者に限定されることになります。
例えば、ボイラー技士の場合ボイラーの整備が不完全であれば爆発や、出火の危険性がありボイラーが設置されたビルなどの安全性、更には人の身体生命の安全が脅かされます。また、企業や個人の財産を扱う仕事では、一歩間違えばその企業や個人の将来を破壊してしまう危険性をはらんでいます。そのために、その分野について専門に学んで一定の能力を有する者にのみ資格を与えその職業に就くことを許すこととしているのです。そうすることにより、これらリスクを回避し、顧客や利用者の信頼を得ることができるのです。
医療についても同様のことが言えます。特に医療行為は、医的侵襲行為と言われ患者の身体に対する人為的な侵害行為です。それが許されるのは、それが医療という正当な行為だからであり、仮に医療の名を騙って殺人を行おうとしたらそれは犯罪です。このように患者という人の生命身体に対する大きなリスクを負っているわけですから医療に従事するものは専門的な知識と能力を有していることが求められるのです。そして、それを担保するものが免許制なのです。
看護師でない者は原則として看護師として定められた業務をしてはならないことになっています(保助看法31条)。また、看護師は、業務上知りえた患者の情報を第三者に漏らしてはいけません(保助看法42条の2、秘密保持義務)。このように、専門職については、その業務の範囲や責任が厳格に定められるのが通常です。
あなたも、学校で看護の専門分野の知識、技能をしっかりと身につけて患者に信頼される看護師になってください。

<弁護士 吉岡譲治>

●クーリング・オフ
Q 訪問販売員が自宅に来て巧みに勧められ、ふとんを購入しました。しかし、後で落ち着いて考えると、高額で、買わなければよかったと後悔しています。 商品を返品して、既に支払ったお金を返してもらうことはできるでしょうか。
A 訪問販売や電話勧誘によって商品を購入した場合、一定の要件を満たせば、法定の期間内に限り、理由を問わず契約を解消することができます。これをクーリング・オフといいます。訪問販売や電話勧誘販売は、消費者が熟慮する期間を経ずに契約をしてしまうことが多いことから、消費者を保護するために設けられた制度です。
但し、通信販売については、熟慮する期間があったものと見なされ、クーリング・オフの適用はありません。 クーリング・オフにより契約を解消すると、契約は初めからなかったこととなるので、既に支払った代金は返還され、商品の返還に要する費用も業者負担となります。
要件としては、訪問販売により、特定商取引法に基づく政令で、クーリング・オフができる商品・役務(サービス)・権利として指定されたものについて契約した場合で、法定の書面を受領した日から8日以内であること(初日含む)、化粧品等、政令で指定された消耗品の場合は、使用・消費していないことが必要です。
契約解除は文書によることが必要です。郵便局で内容証明郵便を出すのが確実です。
なお、クーリング・オフの期間が開始するためには、業者が法廷の書面を交付する必要があるなど「権利行使障害要件」が定められていますので、8日を過ぎてもとりあえず通知を出しておくことをおすすめします。

【契約解除通知文例】
契約解除通知

私は、平成○年○月○日に、貴社と締結しました○○○(商品名)の購入契約を解除します。支払った金○○円については、直ちに下記口座に振り込んでください。
      ○○銀行 ○○支店
      普通預金口座 口座番号○○○
      口座名義 ○○○○

東京都○○区○○町○丁目○番○号(差出人住所)
○○ ○○(差出人氏名)
千葉県○○市○○町○丁目○番○号(宛先)
(株)○○
代表取締役○○ ○○ 殿

平成○年○月○日

<弁護士 山田恵>

●貸金返済の確保
Q 友人から、10万円を貸して欲しい、あとで必ず返すから、と言われていますが、私としては、本当にきちんと返してもらえるのかどうか不安です。貸し借りについて何か書面を残しておいたほうがよいのでしょうか。
A 金銭の貸し借りについての契約(金銭消費貸借契約といいます)は、書面を作成していない場合でも有効です。しかし、後にお金を返してもらえなかったときに法的な手段に訴える可能性を考えると、貸し借りの証拠となる書面を残しておいた方がよいでしょう。
契約書面には以下の要件を記載しておきます。

・貸した金額と日付
・返済期日、支払方法 ・利息、遅延損害金(※注1)
・保証人その他担保を付けるのであればその定め
・最後に貸主と借主(保証人がいる場合は保証人も)の住所氏名を各自記入し、押印します。

「必ず返すから」と言われても、返済の約束については明確に期日や返済方法を定めておくことが必要です。
市販の「金銭消費貸借契約書」や「借用証書」を利用するのも一つの方法です。
より確実な返済を求めるのであれば、「公証役場」に行って公証人に「公正証書」を作成してもらう方法もあります。公正証書に「強制執行認諾文言」(※注2)が記載されていれば、返済してもらえなかった場合に、裁判所に訴えて判決をもらうことなく直ちに強制執行をすることができます。
他方、貸し借りの際上記のような書面を作っておかなかった場合には、受領書や振込控えが残っていれば、金銭のやり取りがあったことの最低限の証拠にはなります。
友人同士の貸し借りであっても金額の多寡にかかわらずきちんとした書面を作成しておくことは、後々自分が不快な思いをしないためにも大切なことです。

※注1 弁済期に弁済がなかった場合に発生する損害で、当事者間で決めた利率がなければ法定利率(民法上は年5%)によります。
※注2 「債務を履行しなかった場合は直ちに強制執行を受けても異議がないことを認諾」との文言をいいます。

<弁護士 山田恵>

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